書画家 婁正綱の書紀行
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中国大紀行の全50話を、書画家 婁正綱氏が自身の体験をもとに語ります。
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書画家 婁正綱氏
女性書画家。1966年、中国・黒滝江省に生まれる。12歳で書の才能に加えて、知識・知力および記憶力が高く評価され、中国政府より「智力超常児童」として認定。政府より特別教育を施される、中国の著名な書画家達に師事する。以来、その活動は国連やユニセフなどの事業に作品が採用されるなど世界の知識人・文化人等々に影響力を与えている。現在、中国を代表する書画家として、主に日本、中国、米国で活躍している。

Vol.17 「千秋万歳名 寂寞身后事」
 曲阜は、泰山から近いこともあって何回も行きました。その中でも一番強く印象に残っているのは、初めて行った12、13歳ごろのこと。朝早くから父に叩き起こされ、孔林へ連れて行かれたんです。まだ辺りは暗く、誰もいない墓地がとても恐ろしかったことを覚えています。
 私は大字報に孔子の名を書いたことがありますが、そのとき書いたのは“孔老二”(孔家の二男坊という意の蔑称)。文化大革命でそうなったんですが、そんなに批判されている人のお墓がこんなに立派で、子孫も驚くほど多いことが、子供心にも不思議だなぁと思っていました。
 じつは私は孔子より老子の思想の方が好きなんですが、ただ孔子といえば、曲阜で精力的に動き回っていた父を思い出します。歴代皇帝が孔子に贈った書を一つ一つ、一生懸命私に説明してくれた父は、そのときまだ30代。体力も気力もあり、行けるところは全部行ってしまう父に連れ回されていた私は、イヤで仕方ありませんでしたけど(笑)、今となってはいい思い出。そんな若かりし日々への思いを込めて、李白の詩の一節を書きました。

曲阜
 孔子の生まれ故郷として知られる「曲阜」。今も孔子の子孫を名乗る人々が数多く暮らし、その割合は人口約65万人のうち20%近くを占めるという。
 街の入り口には「有朋自遠方来不亦楽乎」=朋(友)有り遠方より来(きた)る、亦楽しからずや=という論語の一節が掲げられ、毎年9月28日には孔子の誕生を祝う「孔子文化節」が催される。まさに孔子づくしの町である。
 孔子が生まれる500年ほど前、周の国の名君であった「周公」の政治を理想とし、“仁”と“礼”を尊ぶ孔子の教えは、漢の武帝が取り入れて以来、2000年にもわたり、中国の人々の間で、信仰・思想のよりどころとして奉られてきた。その威光は孔廟の中心、中国三大宮殿建築の一つにも数えられる「大成殿」や、歴代皇帝から贈られた称号が掲げられた九つの門、大成、至聖、文宣王と3つの称号が刻まれた「孔子墓」など、至るところに今なお色濃く残っている。孔子が説いた秩序と思いやり。その心は、人心の荒廃が叫ばれる現代にこそ、必要なものかもしれない。
出典:日刊ゲンダイ 2007年5月7日
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