書画家 婁正綱の書紀行
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中国大紀行の全50話を、書画家 婁正綱氏が自身の体験をもとに語ります。
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書画家 婁正綱氏
女性書画家。1966年、中国・黒滝江省に生まれる。12歳で書の才能に加えて、知識・知力および記憶力が高く評価され、中国政府より「智力超常児童」として認定。政府より特別教育を施される、中国の著名な書画家達に師事する。以来、その活動は国連やユニセフなどの事業に作品が採用されるなど世界の知識人・文化人等々に影響力を与えている。現在、中国を代表する書画家として、主に日本、中国、米国で活躍している。

vol.11 「浮生若梦(夢)」
   私は黒龍省の生まれですが、昔、祖父が蘇州の地主だったこともあって、今も蘇州には親戚が多く住んでいます。だから私も蘇州は度々訪れています。去年も行きました。
 蘇州といえば、やはり「拙政園」をはじめとする園林ですね。その中でも私はよく、昔の人が住んでいた跡を訪ね歩きます。そして、その度にこの李白の詩の一節を思い浮かべるのです。「浮生若夢」。そこに住んでいた人は、生涯をかけ、とことんまで永久の美を追求した人です。しかし当の本人の姿はすでにこの世になく、夢の跡が残るのみ――まさに、生きることは夢のごとし、です。それは私の人生観にも近い、というと、ネガティブな人生観だと思われるかもしれませんが、私は逆に、夢のようなはかない人生だからこそ、この一瞬一瞬を大切に生きなければならない、と思うのです。

蘇州
 かのマルコ・ポーロが、“東洋のベネチア”と称えた街・蘇州。しかしその歴史は紀元前3世紀・春秋戦国時代まで遡り、ベネチアより100年も長い歴史を誇る。3世紀には呉の都が置かれた。隋の煬帝によって大運河が築かれてからは、文字通り“水の都”として隆盛を極める。清の末期まで、蘇州は中国の経済・文化の中心地となってきた。その繁栄を支えたのは、絹織物である。日本でいう『呉服』とは、もともと蘇州の絹織物を指す言葉だった。
 その蘇州を彩るのが、「文人園林」。知識階級である官僚、文人、富豪たちがつくった園林が、蘇州には100以上もある。仙人が住むという桃源郷に憧れ、永遠への願いを込めてつくった園林は、まさに中国文化の粋の極み。その中でも中国四大庭園の一つ、世界遺産にも登録されている「拙政園」はぜひ一度訪れたい名所。日本の庭園のお手本ともなった園林には、中国の文化をつくった文人たちの理想や願望が凝縮されている。
出典:日刊ゲンダイ 2007年2月5日
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