書画家 婁正綱の書紀行
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中国大紀行の全50話を、書画家 婁正綱氏が自身の体験をもとに語ります。
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書画家 婁正綱氏
女性書画家。1966年、中国・黒滝江省に生まれる。12歳で書の才能に加えて、知識・知力および記憶力が高く評価され、中国政府より「智力超常児童」として認定。政府より特別教育を施される、中国の著名な書画家達に師事する。以来、その活動は国連やユニセフなどの事業に作品が採用されるなど世界の知識人・文化人等々に影響力を与えている。現在、中国を代表する書画家として、主に日本、中国、米国で活躍している。

vol.7 「水」
 前回、山には一つひとつに伝説があると言いましたが、同じように、私は「水」にも伝説があると思っています。もちろんミニヤコンカの氷河をつくりだした「水」もそうです。そして私自身にも「水」の伝説があります。それは何かというと、私は子供の頃、筆に水をつけ、コンクリートの上にそのまま書を描いていました。コンクリートに水で描いた書。これが書画家・婁正綱の原点なのです。
 そうしているうちに、私は水にもいろいろな表情があることを学びました。その中でも一番大きな表情は「水滴」です。一滴一滴にもさまざまな表情があり、わずかな一滴でも継続すれば石をも穿つことができる。だから私の座右の銘は「水滴石を穿つ」です。
 海螺溝氷河も、1年に10mほど動いているそうです。少しずつ少しずつ石を穿(うが)つ一滴の水と、ゆっくりゆっくり時間をかけて流れる氷河。どちらも同じ「水」です。今回描いた「水」という一字には、そんな思いが込められています。

海螺溝
 圧倒的なスケールの大きさを持つ中国の大自然。その感動的な美しさは、時として人間への脅威ともなる。そんな大自然への畏怖や憧憬を体感させてくれるのが、四川省・大雪山脈の最高峰、「ミニヤコンカ」である。海抜7556m。一時期は世界の最高峰だと思われていたミニヤコンカは、数多くの遭難者を出したことから、“魔の山”とも呼ばれた。その氷河の一つ、海螺溝氷河は全長14km、総面積16km²、アジア随一の規模を誇る。落差1080m、幅1100mに及ぶ海螺溝1号氷爆(アイスフォール)の雄大な姿は、海抜3200mに設けられた展望台から眺望できる。中腹には温泉もあり、海螺溝森林公園は新しい観光地としても注目されている。
 ミニヤとは、古代王朝の名。コンカは白い峰という意。つまりミニヤ王国の白い峰の麓には、今も少数民族が暮らしている。その中でも大渡河上流、昔ミニヤ王国があったとされる地域に住んでいるのがギャロン人だ。
 かつて清朝と30年以上も戦い続け、人口が半分以下になってしまったといわれるギャロン人。石造りの高い技術を持ち、戦いのために造られた塔も今は使われることなく、現在のギャロン人の生活はほとんどチベット人と同じになった。しかし独立民族の面影は色濃く残る。ギャロンには“女王谷”という意味があり、この地方に美人が多いことから「美人谷」とも呼ばれているのだ。
 かつて中国を目指した放牧民族や騎馬民族の通り道であったこの谷で生まれ、育まれたオリエンタルビューティー。何と甘美な―。
出典:日刊ゲンダイ 2006年11月28日
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