書画家 婁正綱の書紀行
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中国大紀行の全50話を、書画家 婁正綱氏が自身の体験をもとに語ります。
日刊ゲンダイ紙面にて好評連載中!

書画家 婁正綱氏
女性書画家。1966年、中国・黒滝江省に生まれる。12歳で書の才能に加えて、知識・知力および記憶力が高く評価され、中国政府より「智力超常児童」として認定。政府より特別教育を施される、中国の著名な書画家達に師事する。以来、その活動は国連やユニセフなどの事業に作品が採用されるなど世界の知識人・文化人等々に影響力を与えている。現在、中国を代表する書画家として、主に日本、中国、米国で活躍している。

vol.4 「上窮碧落下黄泉 兩處茫茫皆不見」
 玄宗と楊貴妃のロマンスを読んだ白居易の長恨歌の一節「上は天海から下は黄泉の国まで、探してみたけど、広大すぎて何も見えない」。
すでにこの世にいない楊貴妃を探し求める様を描いていますが、それは私自身の気持ちでもあります。アーティストとして、1人の女性として、生きる意味を探し求める私自身を最もよく表現している言葉です。芸術と愛。この2つは私にとって同じようなものですが、これについて迷い、悩み、一番苦しかった頃、この言葉が頭から離れませんでした。そして、その苦しい時期を乗り越えた今でも、そのときの心境を思い出すたび、同時にこの言葉も心の中に甦ります。一枚一枚の作品に私の魂すべてを託し、私の作品を見てくれる人の魂とふれあいたい。人生の最後まで倒れることなく書き続けたい。そして今、人生、何を楽しみにしているかと聞かれたら、迷うことなく絶筆と答える。芸術は私のすべての愛と生命なのです。

西安
 西安が長安と呼ばれた唐の時代、長安は人口100万人を誇る当時世界最大の街であった。
 そんな長安の繁栄の礎を築いた3代目皇帝・高宗と則天武后の墓「乾隆」。歴代皇帝の中でも夫婦ともに葬られるのは珍しいという。首がない六十一番臣像が異彩を放つ。
 長安を象徴するのが、玄奘(三蔵法師)が天竺より持ち帰った経典や仏像を収めた「大雁塔」。運ぶのに馬22頭が必要だったほどの経典は玄奘自ら翻訳し、日本にも伝えられた。「興教寺」の中庭に建つ「三蔵塔」に玄奘の遺骨が納められている。
 長安の繁栄は、6代皇帝・玄宗で頂点を極める。玄宗といえば、楊貴妃とのロマンスを抜きには語れない。李白が即興で楊貴妃の美しさを讃える詩を読み、玄宗が冬を過ごした温泉「華清池」では白居易が長恨歌を詠んだ。やがて安禄山の反乱を招き、殺される楊貴妃。悲劇の生涯が胸を打つ。
 国際都市・長安には多くの外国人が入唐した。日本から16歳で渡った阿倍仲麻呂もその1人。帰国がかなわず、一生を唐で過ごした彼の望郷の詩が刻まれた記念碑は必見。
 そして日本からの留学生で最も有名なのが空海だ。わずか6カ月で恵果阿闍梨から真言密教を会得した空海が日本へ送った手紙の一節が「青龍寺」に残されている。
 今も西安に吹くシルクロードの風は、日本にも脈々と伝えられている。
出典:日刊ゲンダイ 2006年10月17日
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