書画家 婁正綱の書紀行
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中国大紀行の全50話を、書画家 婁正綱氏が自身の体験をもとに語ります。
日刊ゲンダイ紙面にて好評連載中!

書画家 婁正綱氏
女性書画家。1966年、中国・黒滝江省に生まれる。12歳で書の才能に加えて、知識・知力および記憶力が高く評価され、中国政府より「智力超常児童」として認定。政府より特別教育を施される、中国の著名な書画家達に師事する。以来、その活動は国連やユニセフなどの事業に作品が採用されるなど世界の知識人・文化人等々に影響力を与えている。現在、中国を代表する書画家として、主に日本、中国、米国で活躍している。

vol.3 「天馬行空而歩驟不凡」
 私が「白馬寺」へ行ったのは16歳のとき。そこで1人の僧侶に会いました。盲目でしたがとても優しい顔をしていました。その時、中国人はよく挨拶代わりに言うんですが、「家はどこですか?」と聞いたんです。すると「私は出家しているので家はない。どこへ行ってもそこが私の家だ」みたいなことをおっしゃって、それが今でも私の心に残っています。
 なぜなら、私もそうだからです。天才と呼ばれた子供はたくさんいたのに、今でも活動しているのは私だけ。それは私に帰る家がなかったから。アーティストとして生きる道を選ぶしかなかった。だから辛いことも乗り越えられた。そうやって今の私がある。
 今にして思えば、まるで私のその後の人生を示唆したかのような僧侶と出会った白馬寺にちなみ、今回は大好きなこの言葉を書きます。「天馬空を行く。豪放かつ非凡に」。午年生まれの私の人生を表現している、と言うとおこがましいかもしれませんが、常にこうありたいと願っています。

洛陽
 9つの王朝が都をおいたことから、九朝の古都と称される「洛陽」も、やはり黄河の支流、伊水のほとりに佇んでいる。
 その洛陽の郊外にあるのが、中国三大石窟の一つ、「龍門石窟」。北魏から唐の時代、約400年の歳月をかけて造営された石窟は、仏教文化の変遷を物語る。9万7300余りの仏像が年代ごとに居並ぶ姿は圧巻。最も古い古陽洞では「釈迦如来」が1500年の時を超えて人々を見守り、最も大きな「盧遮那仏」は聖武天皇に天啓を与え、奈良の大仏建立につながった。
 後漢の初代皇帝であり、漢王朝の中興の祖といわれる光武帝も洛陽に都をおいたひとり。博多湾で発見された「漢倭奴国王」の金印は、光武帝が奴王に与えたものである。
 西暦68年、はるばる天竺(インド)から仏典を白馬に積んできた竺法蘭と攝摩騰を開祖とする「白馬寺」。山門に2頭の白馬の石彫、境内には2人の墓。中国で一生を終えた僧侶の偉大な功績に合掌。洛陽のシンボルとされる仏舎利塔「斉雲塔」もある。仏教文化の発祥の地が、ここ洛陽である。
 隋・唐時代の穀物倉庫「舎嘉倉」からは、1000年前の穀物が、今でも食べられる状態で発見されたという。当時の文明の高さが推し量れる。
 清少納言もそらんじた唐の詩人・白居易が晩年を過ごした「香山寺」。芥川龍之介の「杜子春」にも登場する洛陽の街。日本との交流の歴史も古い洛陽は今も輝いている。
出典:日刊ゲンダイ 2006年10月3日
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